【前編】IHFワールドチャンピオンシップ観戦記 in メッス


ノックアウトラウンドが進み、クライマックスへ近づいているIHFワールドチャンピオンシップ。多くの方が夜な夜なPCの画面に食いついているのではないだろうか。

 

僕は2年に1度の大会が隣国で行われているので、現地観戦をしようと思い、マインツから日帰りで行けるフランス北東部ロレーヌ地方にあるメッスへ行ってきた。大会の公式サイトでチケットを購入した試合は、1月14日開催のグループステージ第2戦、アイスランド対スロヴェニアだ。

 

このゲームを選んだ理由は、各国強豪チームに多くの名コーチ、名選手を送り込む小さなハンドボール大国として、北京五輪銀メダル、2010年EURO3位と華々しい成績を残しながらも、それ以降目立った成績を残せていないアイスランドと、名将ヴェゼリン・ヴヨヴィッチ就任以降、躍進めざましいスロヴェニアの対決に興味を惹かれたからである。

 

夜も明けない早朝、マインツからバスで国境沿いの町ザールブリュッケンへ向かい、電車に乗り換えて国境を越え、メッス駅(Metz Ville)に着いた。その頃には、すっかり日は昇り、いつの間にか昼前だった。荘厳な造りの駅舎を出て、まず目に入ったのはワールドチャンピオンシップの大きな看板。看板にはメッスにてグループステージを戦う国々、スペイン、スロヴェニア、アイスランド、マケドニア、チュニジア、そしてアンゴラの対戦表が載っている。こういう物を見ると大会開催地へ来たことを実感する。

 

 

開場まで時間があったので、地図を片手に町の中心部を散策することにした。モーゼル川畔に位置するメッスは3000年の歴史を持つ商業都市で、三十年戦争、普仏戦争、第一次/第二次世界大戦などの戦争により、交互にドイツとフランスに併合された過去を持っている。
町にはオペラ座や坂茂が建築を手がけた現代美術館ポンピドゥセンター・メッス、300年の年月をかけて造られたサン・テティエンヌ大聖堂など観光名所が多くあり、地元の住人だけでなく観光客らしき人も多く見かけられた。
しかし、駅舎の看板とうってかわって、町中ではワールドチャンピオンシップ関連のイルミネーションやタペストリーなどは無く、開催地の雰囲気は伝わってこなかった。

 

少し歩き疲れ、休憩がてらビアを飲もうと思い酒場を探していたところ、寒空の下にも関わらずアイリッシュパブらしき店の外で、陽気にビアを飲んでいる青と赤に彩られた集団が見えた。気になって中に入ってみると、店内全ての席が同じ色の集団に占拠されている。そう、アイスランドのサポーターたちだ。

 

老若男女みなビール片手に大騒ぎ。誰かが「イースラント(Ísland)!」と叫べば店中全員が大合唱。その光景に圧倒され、しばらく固まってしまった。

 

 

いつまでも立ったままになっている訳にはいかないので、ベルジャンビアを注文し、吉田類さんの酒場放浪記ばりにアイスランドサポーターが陣取る席へ突入。アジア人ということで初めは警戒をされたが、グジョン・ヴァルア・シグルドソンのサイン入りラインネッカー・レーヴェンのユニフォームを片手に拙い英語で来た理由を話した途端笑顔になり、次々と人に紹介されて「スクォル!」(アイスランド語で乾杯)と乾杯して回ることになった。

 

アイスランドサポーターと話す中で最も話題に上がったのはダグル・シグルドソンの日本代表監督就任について。母国のファンの間でも関心事になっているらしい。

 

店内の他の場所では、ワイシャツに青のネクタイを締め、その上にジャージを羽織っている一風変わった雰囲気の男性が、周りの皆と写真を撮っていた。どうやら、その人はアイスランドのヨハネソン首相とのこと。後日知ったことだが、ラインネッカー・レーヴェンのベテラン左腕アレクサンダー・ペターソンも別日に来ていたらしい。一国の宰相が酒場で市民と共に飲んでいる。人口30万人強という小国らしい同胞意識の強さと距離の近さを感じられる。

 

アイスランドサポーターとの会話がひと段落し、カウンターで次のビアを注文していたところ、メッスで教師をしているというフランス人男性に話しかけられた。大会の話をする中で自然と日本の話題となり、彼の口から「Rémi Feutrier」の名前が出た。日本対ロシア戦のテレビ放送で土井レミイ杏利選手のことを知ったらしい。メッスでは日本の試合は行われないが、自国で行われているハンドボールの最大の祭典が楽しみだからフランスの試合でなくともテレビ放送は欠かさず見ているのだそうだ。フランスにおけるハンドボールへの関心度の高さには驚くばかりである。

 

偶然通りかかった酒場でこのような体験や出会いがあるとは思ってもいなかったが、これこそが旅の醍醐味なのだろう。

 

試合時間が近づいたので店を後にし、会場であるLes Arena Metzへ向かった。

待望の後編はこちら → 【後編】IHFワールドチャンピオンシップ観戦記 in メッス

RyoheiKobayashi
1987年神奈川県藤沢市生まれ。ドイツ連邦共和国ラインラント=プファルツ州マインツ在住。日本ハンドボール協会ヨーロッパ特派員。 学生時代ドイツへ旅行した際に観たEHFチャンピオンズリーグRhein-Neckar Löwen対FC Barcelonaで感じた興奮と、Gudjon Valur Sigurdsson(Rhein-Neckar Löwen)によるファンサービスへの感動からドイツへの憧憬を覚える。 卒業後、東証一部上場メーカーで勤務するも、休暇を利用して訪れたドイツにて、THW Kielの広報、Füchse Berlinの事務局長へインタビューしたことをきっかけに、ドイツの地でプロハンドボールクラブのマネージャーになることを志し、退職して渡独。2017年春よりマインツ大学大学院国際スポーツマネジメントコースへ入学予定。 現在、入学準備を進める傍ら、代理人、通訳としても活動中。 好きな酒は、日本酒、球磨焼酎、ビア、ワイン

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